熱データと赤外線データをAI処理と組み合わせることで、真っ暗闇でも周囲の状況を白昼のように見ることができる新しい視覚システムが開発された。
パデュー大学の研究チームによると、HADAR(Heat-Assisted Detection and Ranging)は、熱物理学、赤外線画像処理、機械学習を組み合わせることで、「完全に受動的な、物理認識可能な機械知覚」への道を開くものだという。
LiDAR、レーダー、ソナーといった従来のセンサーには、信号の干渉や目に対する安全性のリスクといった問題がある。一方、ビデオカメラは、夜間や霧、雨などの低照度条件下では性能が低いか、まったく機能しない。しかし、環境のリアルな画像を提供することはできる。
一方、赤外線サーマルカメラは暗闇でも作動し、天候や光の条件にほとんど左右されない。しかし、撮影された画像は不鮮明で奥行きがなく、環境の抽象的な画像しか得られない。
ロボットや自律走行車のための堅牢なビジョンシステムだが、日常使用にはまだ遅くてかさばる
HADARシステムは、両方の視覚化技術の最良の要素を組み合わせることを目指しています。堅牢な赤外線画像システムからの視覚データを赤外線システムからの深度データで強化し、人工知能を使用して詳細、深度、テクスチャを追加します。
研究チームによると、これによりHADARは、真っ暗闇でも日中と同じようにはっきりと世界を見ることができる。また、人間の視覚の範囲を超えた物理的特徴も検出できる。
しかし、HADARを自動車やロボットに組み込んで日常的に使用するには、システムの小型化と高速化が必要だ。現在、HADARは1秒間に約1フレームしか撮影できない。
人間の目にとって適度に滑らかな画像を得るには、少なくとも毎秒24フレームが必要で、自律走行車のような安全関連のアプリケーションでは毎秒30フレーム以上が必要となる。また、開発に携わった研究者のファングリン・バオによれば、このシステムはまだ非常に高価だという。
研究チームは、自律走行やロボット工学に加え、農業、防衛、ヘルスケア、地球科学、野生生物のモニタリングへの応用の可能性を見ている。
この研究は、特にアメリカの国防機関DARPAの支援を受けている。特許出願も進行中である。